#作戦4 予算がない!人手がない!を解決する「学校トークン」の可能性
今回は未来の学校を考える上で、思いついた「学校トークン」について私見を述べてみます。自分は専門家ではないので、間違いもあるとは思いますが、可能性を感じています。ご意見や代案などあれば、教えて下さると嬉しいです。→@marumo258844532
目次
1.学校トークンとは
・学校でのみ使える通貨
「学校トークン」とは私の思い付きです。学校生活圏でのみ通用する独自の通貨で、学校が生産し、職員や保護者や地域の人がそれを利用する。ものとします。
通貨というと日本円のこと?と思いますが、日本円とは違います。
『お金2.0』佐藤航陽氏の表現だと
ートークンとは、仮想通貨の根っこで使われているブロックチェーン上で流通している文字列を指す場合が多く、一般的には仮想通貨やブロックチェーン上で機能する独自の経済圏をこう呼ぶようになりましたが、正確な定義があるわけではありません。-
『これからを稼ごう』堀江貴文氏の表現だと
ーサービスを提供したい側が、貨幣の代わりにトークンを発行し、それをユーザーが購入することによってトークンに価値が生まれる=上がる。この価値のついたトークンを通過に見立て、取引を行うことで、トークンエコノミーが成り立つ。-
ートークンは仮想通貨でも、デジタルなトレーディングカードでも、何でもOKだ。-
発行主体が国ではない通貨というところで、Tポイントや楽天ポイントやWAONポイントにも似ていますが、価値が上下するというところで、イメージは株券に近いです。
具体的なサービスでいうと昨年立ち上がったVALUが思い当たります。
電子ポイント(Tポイントや楽天ポイントやWAONポイント)にも似ていますが、電子ポイントは1ポイントが1円で日本円と紐づいており、価値が上下しない(ように設計している、見せている)点で少し異なります。
・トークンエコノミーによる価値主義
これからの社会は、資本主義と社会主義の世界に、価値主義や評価経済(信用経済)と呼ばれる社会の仕組みも加わってくると考えられています。詳しくは上述の『お金2.0』をご参照ください。
この価値主義の経済は、競争して勝った人がその他の人の資本をもらう資本主義や、全員が一律に同じ資本を分け合う社会主義とは異なります。
価値主義の世界における資本とは、物事の本質的な価値=信用=資本となります。
お金にはならないけど、価値のあるものって世の中にありますよね。
それは親切かもしれないし、約束を守ることかもしれないし、心が満たされる遊びかもしれない。
それが、資本として可視化されるとしたら。親切ポイントなんていう形で貯まっていき、自分の使いたい時にお金のように物やサービスと交換できたら。
それが、学校の中で起きたら。そんな妄想です。
2.学校トークンの可能性
・価値主義経済と学校の相性
この価値主義を聞いた瞬間「あっこれってまさしく学校じゃん。」と思ったのが始まりです。
①子供にとっての価値主義
いわゆるスクールカーストや人気がある子は、価値主義で評価されている子も多いと思います。
勉強がずば抜けてできるわけではないかもしれない。スポーツが万能なわけではないかもしれない。
でも、
「あ~人手が欲しい!」っていう時にいつも気が付く子。
さりげなく友達に親切にしてくれる子。
お願いごとを気持ちよく引き受けてくれる子。
遊びの提案や、仕切りが上手い子
年齢が上がれば上がるほど、子供から人気のある子とは、こういう子に多いです。
それは、学校という金銭報酬が存在しない世界で、人間としての本質=いわゆる人の良さが誰に言われなくても自然と見られている。子供たちはそのあたりの勘が鋭いのかもしれません。だから良い人が好きなのです。
教員が子供に評価する時は、普段の生活で伝えることに加え、通知表でいう生活面の評価や所見に当たるところの評価ですね。
しかし、子供というのはやはり分かりやすさを求めるので、ついつい足の速さだとか、テストの点数で優劣を比べ、自己肯定感を下げてしまっていることが多く、とてももったいない気がします。
②保護者にとっての価値主義
これはまさしくPTAではないでしょうか。完全にボランティアで、金銭報酬はありません。でも、学校のために協力してくださって、学校は日々の教育活動ができています。
我々教員への感謝の気持ちを、お金は渡せないから、活動に変えて下さっている方もいます。
その運営の仕方に、様々な批判や改善の余地など意見はありますが、活動内容の中には子供の安全を守ったり、心の成長を促したりするような価値のあるものも、もちろんあります。
何より、PTA活動をする親の姿を見て、子供が喜んだり、親の背中から学んでくれたりすることが嬉しい、と保護者の方から聞いたことがあります。
また、学校の中に入って活動することで、普段は目にできない子供の姿を目にすることができたり、学校の教育活動にダイレクトで関われることも魅力だそうです。
これらの価値がある反面、運営の強制性や無償というハードルによって、仕事をしている保護者の方にとってはPTA活動は負担が大きいものになっているようです。
③教員にとっての価値主義
ここまでで、あれ?教育ってそもそもが金銭報酬や見返りを期待しないから、価値主義そのものじゃない?と思った方もいるのではないでしょうか。そこで働く教員についても考えてみます。
学校のような公教育では、塾などの私教育とは違って、金銭報酬(給与)は固定で、いくら働いてももらえる報酬は同じです。残業代のような考え方もありません。
そこでは、何にどれだけ時間や労力などの資本を投下するかは、学校や教員個人の裁量次第となっています。
ここに、今日の教員の労働環境の落とし穴があると、私は考えています。
つまり、市場原理のように資本の増減が目に見えて分からないがために、
どの仕事も「やった方が子供にとってはプラスだ」という理由=つまり価値があると判断してしまい、業務量が膨れ上がるのではないでしょうか。
真面目な先生ほど、全てを一生懸命時間をかけて行い。熱心だ。良い先生だ。と評価されています。でも、その結果として長時間労働に陥ってしまう側面もあります。
以上の3つの立場から学校を見直してみると、そこには価値ある行動が必ずあるけれど、一方で課題もありました。
自己肯定感の低下や、仕事との両立、長時間労働です。
しかし、トークンエコノミーならば、この3つを解決できるのではないでしょうか。
その道筋を、考えてみます。
3.トークンをどう使うか
具体的な学校トークンの貯まり方と使い方
これまで気付かれにくかった価値が、トークンによって数値化(可視化)されることが最大のポイントです。
学校トークンの貯め方
【子供たちや教員にとって嬉しいことや助かること】
◎放課後の子供教室でのボランティア
子供達の居場所つくり。日々の雑談をしたり、ポロっと悩みをこぼしたり、苦手な勉強を教わったり、友達と集まったりする場で活動することは、大人にとっても価値のあることだと思います。
◎地域のスポーツ活動
学校の校庭や体育館を開放して、地域の子供むけにイベントをしたり活動をしてもよい。民間やNPOでやっているところもあるので、連携できる。
◎部活動指導
部活動問題が世間でも認知されるようになりました。部活動の指導を、教員から地域や民間へ委託することも、トークンによって可能にならないでしょうか。また、為末大さんもスポーツ選手のセカンドキャリアについて、日本にある学校や公園のインフラを活用する必要性を良く発信しています。スポーツ選手との連携も考えられます。
◎草花のボランティア
学校によって施設の草花の手入れは異なります。児童も勿論携わっていますが、施設が広く手が回らないのが実際で、用務員や事務職員や管理職がボランティアで行っています。
◎設備の補修
大阪の震災での事故のように、学校設備の老朽化は全国的な問題です。しかし、多忙化が問題となっている学校では、設備の維持管理まで手が回っていません。子供の安全のために協力してもらえると、とても助かります。
◎交通安全ボランティア
現状はPTAや地域ボランティアの方に頼っています。集会で感謝を述べたり、手紙やお礼品を卒業奉仕活動で送ったりしますが、トークンを送るのも良いのではないでしょうか。
◎PTA活動
どの活動が必要かは、学校ごとの判断になる。時代に合わなくなって不要なものや、デジタル化して削減できることもあるが、リアルなつながりとして学校に必要なものである。学校の運営を助けていただいている。
今思いつくのはこれぐらいですが、まだまだ可能性がありそうです。
学校トークンの使い方
【保護者や地域の方にとって、嬉しいことや助かること】
☆学校行事への参加
学校行事に参加して、子供が一生懸命何かに熱中する姿は、他の物には替えられない価値があると思います。それを見たり、一緒に参加したり、創ったり、コミュニケーションをとることで、喜びを感じてもらえるのではないでしょうか。また、行事の評価が見える化することは、業務の精選につながると思います。
☆学用品
学校で使う学用品が、定価購入で割高なことに悩んでいたり、きれいだから使いまわしたい、譲りたいまたは譲ってほしいという保護者の声をよく聞きます。メルカリのようにシェアし、トークンで価値を交換したらどうでしょうか。
☆地域のイベント
学校の行事だけではなく、地域の行事にも参加できる。「トークンも貯まっているし、行ってみようか」ともっと参加しやすくなれば、地域おこしにもなると思います。
☆学童保育の利用
現状は自治体ごとに学童保育は無料(つまり全員から税金で薄く広く負担している)か、受益者負担(多くは日本円。税金で補助している場合もある。)のところをトークンでも払えるようにする。集まったトークンは学童の職員の報酬にしても、備品代にしてもよい。そうすれば、家庭の財政事情で学童に通わせられない、もしくは民間は高いから無理、と諦めていた人の負担も減り、嬉しいのではないか。
4.なぜトークンなのか
・必要なのはお金ではなく、「場」
学校に必要なのは、実はお金ではないのかもしれない。
お金よりも、人々の集う「場」としての存在。
さらに言うと、集った人々が気持ちよく動ける「場」をつくることが、学校という多様な人々が利害に関係なく集う時のポイントなのかもしれない。
確かにお金は足りてない。設備の保全も必要だ。お金ではなく、人と人のつながりで乗り越えられるのではないでしょうか。
参加した人にも、子供の成長を目にできたり、必要とされる喜びを、感じることで幸せになる。
藤原和博氏は、和田中の改革に地域支援本部を盛り込み、学校が地域や保護者と協力する仕組みをつくりました。
中央教育審議会 生涯学習分科会(第48回)議事録・配付資料 参考資料目次 参考資料2 2.先進事例等 学校支援地域本部 杉並区立和田中学校における学校支援本部について−文部科学省
隂山英男氏も学校と地域と保護者を連携させ、福岡県飯塚市の教育改革を進めました。
【取材】陰山英男先生 | NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)
これは現在の文科省でいう「チーム学校」の考え方の礎になっています。
しかし、チーム学校の取り組みが成功している学校は、どれくらいあるでしょうか。
学校を人が集う「場」として、デザインできるかどうかが重要で、そのために経済というのは鍵になると思います。貨幣という発明が、経済という大きなうねりを作り、社会が発展してきた歴史を考えれば必然ではないでしょうか。
落合陽一・小泉進次郎の「平成最後の夏期講習」で、グループE「子供」テーブルのプレゼンにあった場作りの考え方がまさにそうです。
学校へのアウトリーチの不足と、一回きりの支援ではなく継続的なつながり、そして支援する側も満たされる仕組み。それが学校に「場」をつくる際のポイントだと思います。
・公立学校とはもともとは「場」だった
公立小学校の歴史をひも解くと、明治維新の学生発布により近代教育が推し進められましたが、それ以前も寺子屋、藩校、私塾と多様な教育機関がありました。
さらに藩校は、昌平坂学問所(後の大学校)のような高等教育機関、藩校(後の都道府県立学校)のような各地域の核となる学校、郷校(地方の市立学校)に大別されます。
このうち寺子屋と郷校が現在の小学校のもとになっているのですが、当初は明治政府は学校を設立するためのお金も教員の人材も不足しており、地域格差があったのでした。
そこで地域住民が出資したり、地元の有力企業が寄付をしたり、教員を担う大人が協力して運営していたのでした。まさしく地域資産としての学校だったのです。
5.学校トークンというファーストペンギン
・学校が価値をつくりだす場になるために
学校はもともとは時代の最先端を教える場だったはずです。知識を享受し、人材をつくり、コミュニティの役割も担っていました。
しかし、いつの間にか時代に取り残され、今や時代遅れの組織になってしまっています。
今こそ最新のテクノロジーを入れ、もう一度コミュニティーとして作り直すときではないでしょうか。
来たるべき新しい時代の価値主義をいち早く実装し、学校から価値を発信したり創ったりできたら、こんなに魅力的な場所はないと思います。
学校にはその可能性が十分眠っています。相性も良さそうです。古い価値観や過去の成功を捨てて、ファーストペンギンとして挑戦する学校でありたい。それをつくる教員でありたい。