けびん先生の作戦

教育再興戦略/教育経済学/edtech けびん先生 @marumo258844532

#作戦6 「経産省」の掲げる教育改革の本気度合い

「控え目に言っても、経産省は本気だ」

今回は経産省の『経済産業省「未来の教室」と EdTech 研究会 第1次提言』についてみていきたいと思います。

 

経済産業省

http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180625003/20180625003-1.pdf

 

今回の提言では、

「50センチ革命×越境×試行錯誤」
「STEAM(S)×個別最適化」
「学びの生産性」

というキーワードのもと、産業界から教育界に対して、提言を行っています。

それぞれのキーワードをもとにまとめているため、内容も整理されており、とても分かりやすく構成されています。

 

初めに今後の社会の変化や未来に求められる教育の姿を述べ、諸外国の教育改革を引き合いに出しながら、日本の教育改革の方向性を公教育・民間教育・企業・入試改革など幅広い視野から検討しています。

 

また、提言の最後には謙遜しつつ、このように述べています。

そうしてまとめられたこの提言は、議論に参画した現役学生を含む多くの教育当事者達の、「未来の教室」に向けた問題意識と理想を束ねたラフ・スケッチである。そのため、内容には矛盾や重複もあり、文教行政や教育
現場における「常識的な言葉遣い」とは大きく異なる用語の使い方も多数ある中、そこをあえてそのままの姿で世に問うこととしたい。全国の教育現場やビジネスの現場、市民社会からの様々な反応を期待したい 

 と締めくくっています。

 

提言としてのラフスケッチであることを断り、文教行政や教育現場の「常識的な言葉遣い」とは大きく異なるがそこをあえてそのままで問いたい、と述べています。謙遜のように聞こえますが、これは挑戦状のようにも取れます。

 

私が提言を読んだ感覚では、教育界に明らかに新しい視点として、ビジネスやテクノロジーの感覚を入れて、社会の変化を強く意識していると感じました。

 

「学びの生産性」という言葉がそれを強く表していると思います。この言葉は、これまで教育界になかった感覚や言葉だからこそ、「常識的な言葉遣い」ではないと述べているけれど、

 

これは畑違いの経産省が教育に口を出してすみませんという謙遜ではなく、

見方が固まっている教育界へ新しい感覚をぶつけるという皮肉かとも取れます。

 

ここに経産省の本気を感じました。

この「学びの生産性」という言葉に対しては、いわゆる教育界からの否定的な反応が見受けられました。「学びと生産性は両立できるものではない。」「たとえ遠回りに見えても、それが学びの豊かさや広がりになる。」「地道に努力してこそ、学力は身につく。」何となくこれらの考えにも一理あるように見えます。しかし、その結果の今の教育界は明らかに行き詰っています。

 

2030年の教育界の姿は

今回の提言で経産省は、具体的に2030年にどのような教育が行われていてほしいかという、具体的な姿をイメージしています。

 

これが非常に分かりやすい。用いるテクノロジー。公教育と私教育と企業の連携。教員の在り方。教育課程の理想的なデザイン。

 

現場の声をワークショップで吸い上げて形にしたからこそ、絵に描いた餅ではなくリアルでイメージできる「未来の教室」の姿です。

 

そして、諸外国の教育政策についても触れています。アメリカやオランダや中国の先進的な取り組みを紹介しつつ、その課題を明らかにし、日本に合う形で取り入れるにはどうすれば良いのか論を展開しています。

 

実際に外国で実現していることからも、政策に説得力があり、各国の教育政策の良い所を取り入れることで、日本の未来の教室がつくられると感じます。

 

これまでの文科省の提言で、ここまで具体的に諸外国の教育政策を踏まえ、具体的な姿を語ったものがあったでしょうか。

 

少なくとも、時を同じくして文科省から公表された、「Society5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会:文部科学省」では、体裁の良い整った考えは示されていますが、小難しいカタカナ語と難熟語ばかりの理想論で、具体性に欠ける印象があります。

現場目線で読むと、いつものお上からのお題目感が否めないものでした。

 

 

「未来の教室」の今後

今後は、この経産省の「未来の教室」プロジェクトが実証実験を行い、データを取りながら改革を進めていきます。

 

経産省が提示する新しい視点は、間違いなく教育界にとってプラスになると思います。テクノロジーの力で社会は大きく変わります。そのためには、やはり資本もマンパワーも必要です。改革には、経済という大きなうねりが必要な時なのではないでしょうか。

 

経産省が示した提言には、新しい未来の予感を感じさせるワクワクがありました。

僕たち現場も負けていられません。具体的に実装するのは私たちです。

 

未来の教室を、一緒につくりはじめましょう。